郊外のしごと

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Interview
vol.4

家族を見守りながら作るアルザス仕込みのパン

家族を見守りながら作るアルザス仕込みのパン

L'atelier de KANDEL Tokyo

奥田有香さん

ハード系のパンを中心に常時20種類ほど並ぶ。

はたらき方を変えた、アルザスでの経験

パン職人の奥田有香さんがお店を開いたのは、武蔵小金井駅から10数分離れた連雀通り沿いの民家の軒先。
「この地に開業を決めたのはここが大叔母の家で、隣には祖母が住んでるから。 年をとって家事をするのも不自由なふたりの手助けをしながら、商売をしたいと 思ったのです」
男社会のパン職人の世界で、アルバイトから叩き上げで技術を習得した奥田さん。かつては相当のワーカホリックでした。その考えを一変させたのが、研修先のアルザスでフランス人のライフスタイルに触れたことでした。
「就業時間はきっちり 7 時間半。その後は庭造りをしたり、車を磨いたり、家族と過ごすことを大事にしている。だから、 ハード系のパンを中心に 常時20種類ほど並ぶ。 気持ちにもゆとりがあるんです」
帰国後、持病が発覚して手術を受けることになったり、大震災を経験したこともあって、奥田さんはこれまでとは違うはたらき方を考えるようになりました。

週に3日から小さく始める

2012年6月に開業したこの店は、台所に専用のオーブンを入れ、販売用の小屋を建てるという最小限の改装でスタートしました。販売はお手伝いも頼んでいますが、パン作りは奥田さんひとり。そのため開店日は週に3日、あとの平日は仕込みの仕事をします。小金井では珍しい本格的な手作りパンの店として近所で評判になり、すぐに商売も軌道に乗りました。固定ファンも増え、人気のパンは午前中で売り切れます。それでも奥田さんは移転したり店舗数を増やしたりということは考えていません。この場所で、家族を見守りながら仕事をする、今のスタイルが気に入っているのです。
「いずれここでパンの販売だけでなく、 カフェを併設できれば、と思っています」

L'atelier de KANDEL TokyoL'atelier de KANDEL Tokyo

奥田有香さん

音楽一家に生まれ、幼い頃からピアノや琴などを習う。音楽家を目指して音大に進学するが、在学中に出会ったドイツパンに衝撃を受け、進路を変更。パン職人を目指す。大学卒業後、大手パンチェーン店にアルバイトとして就労。その後いくつか店を替りながら、現場でパン職人としての腕を磨いていく。2009年若手パン職人を対象とした3ヵ月のアルザス研修に参加。2012年6月6日にラトリエ・ドゥ・カンデル・トウキョウを開業。
http://kandel.jp/

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